2012年4月25日水曜日

湊総合法律事務所


企業法務

Q:新会社法において、取締役の員数はどのように変更になりましたか。

取締役は、株式会社の業務執行機関で、株式会社で最低1人は必要です。取締役会は3人以上の取締役で構成される必要があるため、取締役会を設置する株式会社では、取締役は3人以上必要ということになります。従来は、常に最低3人の取締役が必要でしたが、新会社法施行後は株式譲渡制限会社では、取締役1人でも良いことになりました。

Q:取締役会は、新会社法でも常に設置する必要があるのですか。

取締役会は、取締役3人以上によって構成され、代表取締役の選任など株式会社の重要な業務に関する意思決定機関です。新会社法施行前は、常に取締役会を設置しなければなりませんでしたが、新会社法下では、取締役会は、株式譲渡制限会社では必ずしも設置する必要はありませんが、それ以外の株式会社では必ず取締役会を設置しなければなりません。

Q:新会社法でも監査役は常に設置する必要がありますか。

監査役は、取締役の職務執行や会計監査をする機関です。新会社法施行前は、常に監査役を設置しなければなりませんでしたが、新会社法下では、株式譲渡制限会社では必ずしも設置する必要はありません。しかし、取締役会を設置する会社では、原則として監査役を設置しなければなりません。

Q:新会社法における監査役会の位置づけについて教えて下さい。

監査役会とは、監査役3人以上によって構成されます。そして、そのうち半数以上は社外監査役である必要があり、監査方針の決定や監査報告の作成などを行う機関です。株式譲渡制限会社、委員会設置会社を除く大会社では、必ず監査役会を設置しなければならないことになっています。また、取締役会を設置しない株式会社は、監査役会を設置することもできません。

Q:新会社法における委員会設置会社とは何ですか。

委員会とは、主として、大企業において機動的な経営と実効的な監督を可能にするために設けられた機関で、指名委員会、監査委員会、報酬委員会から構成されています。監査役を設置している株式会社では、委員会を設置することができないことになっています。他方、会計監査人を設置しない場合には、委員会を設置することもできません。

Q:会計監査人どのような機関で、いかなる場合に設置できるのですか。

会計監査人は、主として大企業において計算書類等の監査を行う機関です。会計監査人は、公認会計士または監査法人で就任できないことになっています。新会社法施行前は、資本金1億円以下で、かつ負債総額が200億円未満の会社の場合、会計監査人を設置することができませんでしたが、新会社法下では、大会社(資本金が5億円以上または負債総額が200億円以上の株式会社)では必ず会計監査人を設置しなければなりませんが、大会社以外の株式会社では設置は任意ということになっています。

Q:新会社法下における会計参与とは何ですか。

会計参与とは、新会社法で新たに設けられた機関で、取締役と共同して計算書類の作成などを行う機関です。すべての株式会社で任意に設置することができます。大会社以外の株式譲渡制限会社が取締役会を設置する場合は、会計参与を設置することで監査役に代えることができることになっています。

Q:新会社法下において譲渡制限会社設立ができるようになって、機関間にどのような変化がありますか。

新会社法により、取締役会を設置しなくても済む、株式譲渡制限会社を設立することができるようになりました。従来、取締役会の設置は、すべての株式会社の義務であったため、株主総会の権限は一定に制限され、かつ厳格な招集手続きが求められていました。しかし、株式譲渡制限会社の場合には、取締役会を設置しないので、株主総会の決議事項が拡大されることになりました。また、取締役会を設置しない株式会社の株主総会は、運営方法も簡素化されています。

Q:新会社法下における取締役と監査役の任期はどのようになっていますか。

これまでは、株式会社の取締役の任期は2年、監査役の任期は4年とされていました。
しかし、小規模の会社では、役員の改選を定期的に行い、それを登記することは煩瑣でまたコスト負担にもなっていました。そこで、新会社法では、株式譲渡制限会社の場合は、取締役、監査役の任期をそれぞれ定款の定めにより、最大10年まで延長することが可能となりました。

Q:新会社法で取締役の欠格事由や員数が変わったとのことですが,どのように変わったのですか。

商法下では,「破産手続開始の決定を受け復権していない者」については,取締役の欠格事由とされていましたが,新会社法では,当該事由が削除されました。
また,新会社法では,「法人」が欠格事由と明記されたほか,証券取引法違反や各種倒産犯罪が欠格事由となりました。
員数については,商法下では,取締役は3人以上が必要とされていましたが,新会社法では,一定の会社を除いては取締役会を設置せず,取締役の員数を1人とすることも認められました。

Q:新会社法ではこれまでの有限会社はどのような扱いを受けるのですか。特別な申請行為等が必要となるのですか。

従前の有限会社は、特例有限会社として扱われます。
ここに、特例有限会社とは、新会社法施行前に有限会社として存在していた会社が、新会社法の施行により自動的に株式会社とみなされることになった会社のことをいいます。既存の有限会社は、原則として、特例有限会社として存続するために特別の定款変更や登記申請は必要ありません。

Q:特例有限会社では、これまでと変わるのはどのような点ですか。

特例有限会社では、従来の有限会社では50名となっていた社員の員数制限が廃止となり、最低資本金も撤廃されます。また、新株予約権や社債の発行が可能になります。そして、新会社法施行後の定款については、「有限会社の定款」が「株式会社の定款」と読み替えられ、「社員」が「株主」に、「持分や出資口数」が「株式や株式数」にそれぞれ読み替えられることになります。
一方、特例有限会社には、その存続期間について、特別に制限は設けられていません。また、特例有限会社は、新会社法上は株式会社となりますが、経過措置で「有限会社」の商号の使用や従来の会社の規律の継続が認められます。

Q:特例有限会社から通常の株式会社に移行したいのですが、どうすれば良いですか。

特例有限会社から、通常の株式会社へ移行する場合、定款においては株式会社への商号変更手続きが必要です。そこで、商号を「株式会社」の文字を用いたものに変更するために、定款変更の株主総会決議を要します。また、登記手続については、特例有限会社の解散登記と株式会社の設立登記を行わねばなりません。
なお、通常の株式会社への移行手続きのためにかかる費用として、登記の登録免許税が上げられますが、これは、特例有限会社解散の登記について3万円、株式会社設立の登記について資本金額の1,000分の1.5(税額が3万円未満の場合は3万円)となります。

Q:これまでの有限会社の取締役等の任期はどうなるのですか。

これまで有限会社は、取締役および監査役には任期の定めがありませんでした。
しかし、新会社法が施行されて有限会社制度が廃止されて、有限会社も株式会社とみなされる(特例有限会社)ことになりますので、取締役及び監査役の任期については、他の株式会社の規定に従わなければならなくなります。

Q:契約書は作成しなくても契約は成立すると聞きました。そうだとすると契約書は作成しなくても良いのではないでしょうか。

確かに、賃貸借契約や、売買契約などは、諾成契約と呼ばれて、契約書は作成しなくても効力は生じます。しかし、口頭だけでは、紛争となった際に言った言わないということになり、トラブルの原因となりますから、基本的には全ての取引について契約書を作成しておかなければいけません。

Q:契約書の原案は、相手に作ってもらって良いですか。

契約書の原案は,自分のほうで作って相手に送付しましょう。
相手方に先に作成させると、どうしても相手方主導で話が進んでしまいます。
ですから、交渉の早い段階で、自分に有利な条項を盛り込んだ契約書原案を作成して相手方に渡すことが重要です。

Q:市販されている契約書のひな形に書き込む形でも良いですか。

市販のひな形は、あくまでも参考として示されているに過ぎません。契約書は一旦締結されてしまえば、その文言にしたがって解釈されますから、自分の要望を具体的に契約書内に盛り込んでおく必要があります。したがって,ひな形に書き込んで使用することはお勧めできません。
作成の仕方がわからなかったり、内容が複雑な場合には、はやり弁護士に相談した方がよいです。

Q:売掛金や請負代金の支払いが滞ったときにはどうしたらよいのですか。

債権の回収には様々な方法が考えられます。
まず,相手との話合いが可能であれば,裁判外の手段としては,強制執行認諾付きの公正証書を作成するのも一つの方法です。
また,裁判上の手段としては,仮差押え,訴訟提起が一般的といえます。
仮差押えのためには,不動産、商品、売掛債権、預金など差押の対象財産を探すことが重要になりますし,裁判外での話合いを行うにしても,相手方の資産状況を事前に把握しておくことはその後の手段の検討のために有用です。

Q:取引先が倒産したらどうしたらよいのですか。

破産や民事再生などの法的手続きの時は、それに従わなければならないでしょう。任意整理のときは、弁護士主導ならその弁護士の処理に協力したほうが解決は早いでしょう。しかし、困るのは、整理屋が入り込んだときです。この場合、債権者から破産を申し立てるという手段もあります。

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知的財産権

Q:当社の商標が侵害されているおそれがあるのですが,警告状を出す必要はありますか。警告状を出す場合の注意点は何ですか。

一般的には,警告状を出してから訴訟提起が行いますが,訴訟提起の要件ではありませんので,必ずしも必要ではありません。しかし,事案によっては警告状を出すことによって,相手方が自主的に使用を止めることもあり得ますし,反論によっては今後の争点も判明するなどの効果を得られることもあります。
警告状を出す際には,相手方が本当に侵害しているのかについて注意が必要です。
むやみに警告状を出すと,不法行為に該当したり,不正競争防止法違反となることもあります。


我々は、二酸化炭素の温室効果ガスを削減する方法

Q:特許出願をしたいのですが、どうしたらいいのですか。

特許の出願をするのは弁理士の仕事です。信頼できる弁理士に相談することです。必要があれば、当事務所は提携弁理士事務所を紹介します。

Q:ちょっとしたアイデアがあるのですが、これを実用新案で保護することは可能でしょうか。

可能です。ちょっとしたアイデアでも、商品価値のあるものは実用新案を出願する価値があります。特許と比べて簡単に権利確保できますが、期間は出願後6年と短期です。

Q:他人のホームページの写真や文章、図表等を自分のホームページに勝手に利用できますか。

これらはいずれも、著作物ですから、原則として許諾なく利用はできません。ただ、著作物では「私的利用」は適法ですから、個人的な利用は可能です。
もっとも,自己のホームページへの利用の場合,不特定多数のアクセスを可能にするものですから、「私的利用」を超えてしまい、違法となりますので,注意してください。

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建築紛争

Q:新築のマンションを購入し完成後すぐに入居したのですが,入居後1年で雨漏りがし始め,部屋の壁やマンションの外壁にヒビも入っているようなのですが,誰にどのように責任追及をしたら良いのでしょうか

マンションの場合,部屋などの専有部分については,その所有者が当事者として単独で責任追及ができますが,外壁などの共用部分については,管理組合が当事者として責任追及する必要があります。
これらの場合,基本的には売主である販売会社に対して,瑕疵修補や損害賠償を請求することになります。

Q:新築の建物が、雨漏りするなど瑕疵があって困っています。契約を解約できますか。

修理を要求するか損害賠償を請求することは可能です。しかし、解約は無理です。

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不動産に関する諸問題

Q:地主から土地を借りて建物を建てて住んでいますが,建物の所有権登記をしていません。建物の登記をした方がよいのでしょうか。

建物の登記はした方がよいです。
もし,登記をしないままだと,仮に地主から同じ土地を買い受けたという人が現れた場合には,土地の買受人に借地権を主張することができなくなってしまいます。その場合,建物を自らの費用で壊して更地にした上で,土地を買受人に明け渡さなければならないことになってしまいます。
これに対して,建物の登記をしておけば,このような場合にも,土地の買受人に対して借地権を主張することができます。

Q:地主から土地を借りて建物を建てました。建物の登記をしたいのですが,将来のことを考えて息子名義の登記にしても大丈夫でしょうか。

建物の登記名義人は,借地権者にすべきです。
もし,借地権者と建物の登記名義人が異なる場合には,その登記は無効なものとされ,借地権者は借地権を第三者に対して主張することができません。したがって,上記の設問のように,地主から土地を買受けた人が現れた場合には,その人に土地を明け渡さなければならないことになってしまうのです。

Q:地主から土地を借りていますが,契約期間がもうすぐ満了します。契約書には,更新料についてなにも記載されていないのですが,契約を更新する際に地主に更新料を支払わなければならないのでしょうか。

法律は更新料の支払について何も規定していませんが,当該地域において更新料支払が慣習とされ,法律と同視しうる程度にその慣習が一般化している場合には,合意がなくとも更新料を支払う必要があると考えられています。
もっとも,更新料支払を認めた裁判例はほとんどなく,地主との合意がない限り更新料を支払う必要はないというのが裁判所の判断と考えてよいでしょう。
なお,借家の場合でも同様に考えられています。

Q:建物の一室を借りて飲食店を経営していますが,家主から突然家賃の値上げをすると言われました。家主の言うとおりの家賃を支払わなければならないのでしょうか。

借家契約において,不動産の価格の上昇等により,家賃が近隣の相場に比べて不相当に安くなった場合には,家主が借家人に対して家賃の増額を請求することができます。
もっとも,家主は無制限に家賃を増額できるわけではありません。そこで,借家人としては,自ら相当と認められる金額を家主に対して支払い,もし家主がこれを受け取らない場合には家賃を供託することになります。
家賃額について折り合いが付かない場合には,調停あるいは裁判において最終的に確定することになります。

Q:建物を借りて住んでいるのですが,トイレが故障して使えなくなってしまいました。修理費用については家主に負担してもらえるのでしょうか。

トイレの故障が,借主の通常の使用に伴って発生したもので,借主に責任がない場合であれば,家主がトイレを修理する義務があります。
家主は,建物についての使用収益に必要な範囲で修繕義務を負っています。反面,借主は他人の建物を借りているので,その使用について一般通常人が支払うべき注意義務を負っています。そこで,借主がこの義務に違反してトイレを故障させた場合には借主において修理をする必要がありますが,借主が通常に使用していてトイレが故障した場合には家主において修理することになります。なお,借主に責任がない場合に,借主が修理費を負担した場合には,修理費用について家主に請求することができます。

Q:家を買うために契約を締結し手付金を支払ったのですが,事情があって受けられると思った融資が受けられませんでした。契約を解除して手付金を取り戻せますか。

融資特約が契約に入っていればかのうですが,特約がない場合には、手付放棄するほかありません。

Q:建物を貸して欲しいと言われており,今貸すのは良いのですが,将来必要なときに返してもらいたいと思っています。そのような契約は締結できますか。

定期借家契約をすれば可能です。

Q:定期借家権はどうすれば設定できるのですか。

書面で契約する必要があります。また、定期借家契約であって更新ができないことを明示し、かつ期間を確定して契約する必要があります。

Q:何か月分もの家賃を滞納している住人がいます。どうしたらいいのですか。

交渉により明渡しに応じてもらえるのであれば,交渉によることも考えられますが,交渉が不可能な人であれば,早めに裁判で明渡させるべきでしょう。裁判には費用がかかり,また,場合によっては,立退料が必要となることがありますが,そのまま放っておけば滞納分はさらに膨らんでしまうと思われます。

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債権回収(貸金売買代金等)

Q:弁護士に依頼して法的手続を委任しようと思いますが、その前に自分でも回収の努力をしてみようと思います。この場合、どのような手段が考えられますか。

まず内容証明郵便により請求をする方法が良いと思います。内容証明郵便であれば、文書の内容や差出日が公的に証明されますから、後日、裁判になっても、相手がしらばっくれても言い訳が通らなくなります。また、口頭や普通郵便で請求する場合よりも、相手に対して強い請求意思が伝わり、相手が請求に応じる可能性もあります。

Q:相手方がそれでも支払いに応じない場合には、どうすれば良いですか。

公正証書の作成をお勧めします。公正証書であれば、金銭債権の請求については確定判決と同様の効力を有しておりますので、それをもとに裁判所に対して強制執行手続の申立をすることができます。一方、公正証書ができなければ、法的手続を執ることになります。その場合には、通常の訴訟以外にも、いくつかの種類があります。
1) 支払督促 簡易裁判所に対し、あなたの一方的な申立に基づいて、督促手続をしてもらう方法です。この場合、支払督促が相手に郵送されて2週間以内に相手が異議を出さない場合には、相手方の財産に対して強制執行をすることが可能となります。しかし、相手方が異議を出してくれば支払督促は効力を失い、普通の裁判に移行することになります。
2) 少額訴訟 平成10年に新設された制度で、簡易裁判所で行われます。30万円以下の金銭の請求について、普通の裁判よりも審理手続を簡易化し、1回の期日で集中して審理を行い、判決も原則としてその日に出すというものです。しかし、相手方がこのような簡易な手続きに反対し、異議を出せば普通の裁判に移行します。
3) 調停制度 調停委員に相手方との話し合いの仲介役をしてもらって、調停を成立させる制度です。調停は、話し合いを行うための制度ですから、最終的に当事者間で合意に至らなければ、手続は終了します。

Q:裁判等を提起する前に相手方と返済してもらう約束ができたのですが、相手方が約束通り返済してくれるかどうか不安がある場合には、どのような手段がとれますか。

即決和解という手続があります。これは簡易裁判所に申立をして、裁判所に合意の内容を和解調書という形にしてもらう制度のことです。
この即決和解手続を取れば、強制執行を行うことができます。

Q:取引先が支払期限の猶予を申し出てきた時には、どうすべきですか。

取引を継続するか否か,相手方が資産を有しているのか否かなどにより手段が異なると思われます。
仮に,支払期限の猶予に応じる場合でも、会社代表者や関係者の保証をつけたり,担保の提供や手形の交付を条件にすべきです。
いずれにしても、相手方の資産状態が悪化している可能性が極めて高いので,今後十分な注意が必要です。

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損害賠償

Q:交通事故で気に入っていた車が壊れて全損状態になってしまいました。
とても気にいっていた車なので,慰謝料を請求したいのですができますか。

物損の場合,思い入れが強いものであっても残念ながら原則として慰謝料は認められません。

Q:それでは、この車を修理させることはできますか。

全損状態の場合には、原則として、修理費の請求をすることはできず、事故時の車両の流通価格相当額の賠償請求ができるにとどまります。

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ペンシルベニア州で失われた動物を報告する方法

保険に関する諸問題

Q:夫が交通事故で死亡してしまいました。現在、加害者側の保険会社と交渉していますが、全く進展しません。どうしたらよいでしょうか。

保険会社の場合、当事者だけだと保険金額を極力低く算定します。
弁護士を代理人として交渉されることをお勧めします。
また、保険会社の損害額の算定基準と、裁判所での算定基準はかなり異なりますので、保険会社の回答がはかばかしくない場合には、裁判を提起して判決を得るか、裁判官の訴訟指揮に従いながら和解を試みることも有用です。

Q:このたび私は残念ながらガンとの宣告を受けました。従来からかけてあった医療保険で保険金の請求をしましたが、告知義務違反で支払えないと言われ拒否されています。どうしたら良いでしょうか。

本当に告知義務に違反しているのであれば仕方ないですが、保険契約の約款には、通常は、告知内容について保険会社側が知っていた場合や、あるいは、知らなくてもそのことに過失があった場合には、保険契約を解除できないとされています。保険契約の約款はとても細かい字で書いてあって、内容も複雑なので、まずは専門の弁護士に相談されることをお勧めします。

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破産・民事再生・任意整理

Q:企業の再生させるのに会社更正手続や民事再生手続があると聞きましたが、どのようなときに可能ですか。

債権を何分の1かに減縮して、長期に分割して弁済する(会社更生・最大15年、民事再生・最大10年)ことが可能であることを前提に、債権者に納得してもらえるような再建計画案ないしは再生計画案が立案可能でなければなりません。
そして、再生に協力してくれるようなスポンサーや、当面の資金を確保しておかなければなりませんので、いずれの手続にしても、早めに着手しないと、再建、再生は不可能です。

Q:中小企業の再生は困難と聞きましたがどうしてですか。

それはスポンサー確保が困難だからです。民事再生事件で最も苦労するのがこの問題です。

Q:知人が多重債務で苦しんでいます。どのようにアドバイスすれば良いですか。

クレジット会社やサラ金など貸金業者からの多重債務者は、全国で100万人を超えるといわれています。しかし、弁護士に相談・依頼する人はごく少数にとどまっており、多重債務者のうち多くが、スポーツ新聞の広告やビラ・チラシなどの「債務の一本化」とか、「一括返済可能」などの甘い誘惑に惹かれ、騙されてさらに債務が膨らんで深みにはまってしまっています。更に信じられないことですが、多重債務者を食い物にする悪徳弁護士(いわゆる提携弁護士)を貸金業者に紹介されて、高い費用を取られた上、無理な返済を続けさせられるといった場合も頻発しています。
ですから、知人の方には、貸金業者(サラ金など)の甘い言葉に誘われて更に借入をしたり、これら業者から紹介される提携弁護士に依頼する事は絶対にしないようにして、まず、しっかりとした弁護士に相談するようにアドバイスしてあげることが重要です。

Q:弁護士にサラ金処理を依頼する場合の手続きはどのようなものですか。

きちんとした弁護士に債務整理を依頼した場合の手続についてご説明します。
まず、弁護士は、受任後、直ちに、サラ金等の貸金業者に、弁護士が債務整理を受任したという「介入通知」を発送します。 そして、これが到達した時点でほとんどの貸金業者は、多重債務者本人に対する返済請求等の連絡をしなくなります。これだけでも弁護士に依頼する意味は十分にあります。弁護士は介入通知とともに貸金業者に対し、これまでの取引経過を開示するように要求しますが、この要求にもかなりの業者が応じてきているのが実状です。
そして、介入通知発送後の連絡はすべて弁護士と貸金業者の間で行う事となり、本人が貸金業者と交渉する事はありません。債務整理の方針を決定するまでの間(通常2〜3ヶ月)、ご本人の貸金業者への返済は停止します。
かかる手続きを経て、弁護士は、借入金額について利息制限法に基づく引き直し計算を行いますが、ほとんどの貸金業者は利息制限法の上限を大幅に上回る利息を取っているので、 この引直し計算により債務額は減少します。長期にわたって返済している場合には、大幅に減少することが結構あり、数年以上返済を続けているような場合には、債務額がゼロになることや、さらには、逆に貸金業者に対して払いすぎた利息の返還を請求出来る事多々あります。
上記引き直し計算をしても残債が残る場合には、弁護士は依頼者の生活状況に応じた返済計画案を立て、各業者と粘り強く交渉します。そして、長期分割返済の和解契約を締結することになります。

Q:破産するためにはどのくらいの費用がかかりますか。

まず,申立代理人に払う弁護士費用と申立印紙代,裁判所への予納郵券代,裁判所への予納金が必要になります。
東京地方裁判所では、少額の破産管財事件については、一律20万円の予納金を納めることとなっております。
破産同時廃止事件の場合には,約2万円程度必要となります。

Q:友人がお金を借りる際に保証人になることを頼まれて,保証人となってしまいました。 友人が破産した場合,私の保証債務はどうなるのですか。

保証債務はそのまま残るので、保証人として残額の全部につき責任を負わなければならいことになります。

Q:破産すると不利益を受けますか。

転居や旅行するときは裁判所の許可が必要となります。
また,破産者であることが資格喪失事由となっている職業にはつけなくなりますので,免責決定後復権するまで,一定の職業にはつけなくなります。
さらに,管財事件となった場合には終結するまで、郵便物については,一旦,破産管財人のところに行ってしまいます。(その後,破産管財人から返還されます。)主な不利益はこの程度です。
戸籍に載るわけではありませんし、選挙権も失いません。

Q:任意整理であれば,ブラックリストには載らないのでしょうか。

債務整理のご依頼を受けた場合,業者に対して,弁護士が受任したことを通知する書面をだします。
これによりブラックリストに載ってしまうので,破産,民事再生,任意整理のいずれの手段であっても,ブラックリストには載ってしまいます。

Q:個人の民事再生というのはどのようなものですか。自宅は残ると聞いたのですが本当ですか。

担保のついていない債務が5000万円以下で、かつ、定収入があれば、自宅を残せる個人の民事再生手続きがあります。
個人の民事再生の場合,3年間(最高5年間),法定の債務再生計画に従って返済を行うことになります。

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親子問題・離婚問題

Q:夫は私に暴力をふるいます。離婚したいのですが、夫は承諾するどころかかえって暴力がエスカレートします。どうしたらいいですか。

家庭内暴力は一般的には,放置しておけばエスカレートしていきます。
できるだけ早く弁護士に依頼し、調停、訴訟と必要手続きを進めることをお勧めします。
また、場合によっては,都道府県の配偶者暴力センターや各区の福祉事務所に連絡し,シェルターの利用やその情報提供を受けたり,又は最寄りの警察署に相談し,保護を求めて下さい。
離婚には以下のように、協議離婚、調停離婚、審判離婚、裁判離婚という手続き上の区別があります。
(1) 協議離婚 民法では、「夫婦は、その協議で、離婚をすることができる」と定められていますので、離婚について協議した結果、夫婦で合意に達した場合は、特別の理由を必要とせずに離婚をすることができます。
夫婦間で離婚協議がまとまった場合は、離婚届を役所に提出し、これが受理されると離婚が成立することになります。
但し、未成年子があるときに協議離婚をするときは、子の監護をすべき者その他監護について必要な事項(面接交渉、養育費)を定める必要があります。
また、協議離婚をした者の一方は、相手方に対して財産上の分与や、慰謝料を請求することができますので、離婚後のトラブルを防止するためにも、これらの事項を離婚協議書にしておく方が良いでしょう。離婚協議書は、公証役場で手続をすれば、公証人が公正証書を作成してくれますので、財産分与、慰謝料、養育費など金銭の支払いが発生する事項については、公正証書にしておくと、合意事項の不履行について、裁判を経ずに強制執行をすることができますので有用です。
(2) 調停離婚…離婚について夫婦間で協議がまとまらない場合は、当事者は家庭裁判所に離婚調停申立をすることができます。調停離婚は、裁判手続と同様な法的効果が認められます。なお、調停をしても成立しないと考えて、いきなり裁判を提起することはできません。調停前置主義といって、まず家庭裁判所で調停を経なければならないことになっているからです。これを調停前置主義といいます。
(3) 審判離婚…家庭裁判所による調停によっても当事者の合意が成立しない場合は、家庭裁判所が相当と認めるときは、一切の事情を考慮して、当事者双方の申立ての趣旨に反しない範囲内で、家庭裁判所の職権による審判をすることができます。この審判によって成立した離婚を審判離婚といいます。もっとも、離婚の審判がなされた後、当事者が2週間以内に異議を申し立てた場合は、この審判は効力を失うことになります。
(4) 裁判離婚…協議離婚、調停離婚そして審判離婚がすべて成立しなかった場合には、夫婦の一方は、一定の場合に限り、民法および人事訴訟法の定めるところにより、家庭裁判所に離婚の訴えを提起することができます。これを裁判離婚といいます。

離婚の訴えを提起できる一定の場合とは、以下の5つです。
1 配偶者に不貞な行為があったとき
2 配偶者から悪意で遺棄されたとき
3 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき
4 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込がないとき
5 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

Q:夫が不倫をしていることが発覚しました。離婚するとどのくらい慰謝料が取れますか。相手の女性からも慰謝料を取れますか。

夫についても、相手の女性についても、慰謝料請求は可能です。
慰謝料額は事案により異なりますが,上限は300万円ぐらいです。なお、片方からもらうと、もう一人からは大幅に減額されてしまうというのが実情です。


"七面鳥は互換性があります。"

Q:私は,浮気していることが妻に知れたため,妻と別居し、浮気相手と同棲して8年がたちます。私から離婚請求できますか。

日本では有責配偶者からの離婚請求はできないという原則があります。しかし、判例も長期の別居自体を離婚事由に認める傾向にはあります。
別居7〜8年で離婚が認められる例もあれば,10年以上別居していても離婚が認められていない例もあります。
したがって,別居後8年が経過しているということであれば,具体的な事実関係によっては,離婚請求が認められる可能性も十分考えられます。

Q:妻と別居していますが、妻から婚姻費用分担の請求を受けています。妻は勤めていて定収があります。それでも生活費を支払わなければならないのでしょうか。

別居中の夫婦間で、生活費(これを婚姻費用といいます)を一方が支払ってくれないような場合には、家庭裁判所に調停の申立てをして、婚姻費用の分担を請求することができます。
調停手続においては、夫婦の資産、収入、支出などの一切の事情について、当事者双方から事情を聴き、必要に応じて資料の提出を求めるなどして、事情聴取を行い、解決案を提示・助言をしたりして、話し合いを行います。調停が不成立(不調)になった場合には、自動的に審判手続が開始され、家事審判官(裁判官)が一切の事情を考慮して、審判をして結論を出すことになります。
上述のように、婚姻費用の分担は、別居しても従来と同程度の生活ができるだけの生活費を渡すというものです。配偶者に定職があれば、その分の義務は免除されます。
妻が自分の給料で十分生活レベルを維持できるのであれば、婚姻費用の分担はゼロということもありえます。

Q:私は長年夫と結婚生活をしてきましたが、このたび離婚することになりました。夫名義の財産でも私がもらえるものがあると聞きましたが、それはどのような手続きをすれば良いのですか。

財産分与請求権とは,離婚をした者の一方が相手方に対して財産の分与を求める権利のことですが,この内容には,(1) 婚姻中の夫婦共同財産の清算,(2) 離婚後の経済的弱者への扶養料,(3) 離婚による慰謝料の3つの要素があるとされていますが,中心的な要素としては (1) の清算的な要素です。
現在では、それぞれの収入格差をあまり考慮せず、2分の1ずつに分けるのが実務の方向です。
なお,財産分与がなされていても,別途,慰謝料の請求をすることは可能ですが,財産分与額も考慮され決定されることになります。
離婚前であれば、離婚調停の中で財産分与について話合いをすることができますし、離婚後であれば、離婚のときから2年以内に家庭裁判所に調停の申立てをして、財産分与を請求することができます。
調停手続においては、夫婦が協力して取得、維持した財産がどれ位あるのか、財産の取得、維持に対する夫婦双方の貢献の割合はどれくらいなのか等一切の事情について、当事者双方から事情を聴き、必要に応じて資料の提出を求め、事情聴取を行って、解決案を提示・助言をしたりして、話合いを進めます。
もし、調停が不成立(不調)になった場合には、自動的に審判手続が開始され、家事審判官が一切の事情を考慮して、審判をして結論を出すことになります。

Q:私は、夫に浮気された上、婚姻期間中暴力も受けました。離婚に際し、夫に対して損害賠償請求することができますか。

慰謝料の請求をすることができます。慰謝料とは、相手方の不法行為によって被った精神的苦痛などを慰謝するための損害賠償です。
離婚前の場合は、離婚調停で慰謝料について話合いをすることができますが、離婚後であれば、離婚のときから3年以内に、家庭裁判所の調停手続きを利用することができます。
調停手続では、当事者双方から、離婚に至った経緯や離婚の原因がどこにあったかなどの事情を聴いたり、必要に応じて資料の提出を求めるなどして事情を聴取し、解決案を提示・助言をするなどして話合います。

Q:夫と離婚する際に、子供たちの親権は私が取得することになりました。夫に対して養育費を請求したいのですが。

離婚をすると夫婦の縁は切れますが、親子の縁は切れません。子供に対する扶養義務は両親にあり、離婚しても両親がその経済力等の事情に応じて子の養育費を分担しなければならないのです。
離婚前であれば、離婚調停の中で子供の養育費について話合いをすることができます。また、別居中の場合は、婚姻費用の分担の調停の中で子供の養育費について話合いをすることもできます。
そして、離婚後であっても、子を監護している親から他方の親に対して、家庭裁判所に調停の申立てをして、養育費の支払いを請求することができます。
さらに、話合いの結果合意した養育費であっても、その後に事情の変更があった場合は、養育費の額の変更を求める調停を申し立てることができます。
調停手続において、話し合いがまとまらず、不調になった場合には、自動的に審判手続が開始され、家事審判官が一切の事情を考慮して、審判をして結論を出すことになります。

Q:私は妻と離婚することになり、親権も妻にとられてしまいました。どうしても息子と会いたいのですが、どうすればよいでしょうか。

面接交渉の協議をするか協議が整わなければ調停を申し立てることです。
面接交渉とは、離婚後に子供を監護・養育していない方の親が子供と会う機会を持つ親の権利です。
離婚前の場合は、離婚調停の中で面接交渉について話合いをすることができます。面接交渉の頻度、場所など、具体的な内容や方法について、協議がまとまらない場合には、家庭裁判所に調停の申立てをして、面接交渉の具体的な内容や方法についての取り決めます。
調停手続においては、子供の年齢、性格、就学の有無、生活のリズム、生活環境等一切の事情について、子供の意向を尊重して取り決めがなされます。
もし、話し合いがまとまらず、不調になった場合には、自動的に審判手続が開始され、家事審判官が一切の事情を考慮して、審判をして結論を出すことになります。この場合、子供の福祉の観点から、面接交渉が認められない場合もありますから注意が必要です。

Q:離婚に伴って、子供の氏はどのように変更されますか。

父母が離婚したことにより、子が父又は母と氏を異にするにいたった場合、その子は家庭裁判所の許可を得て、父又は母の氏を称することができます。
父母が離婚し、筆頭者である父の戸籍にあって父の氏を称している子が、母の戸籍に移り母の氏を称したいときには、家庭裁判所に対してこの申立てを行って、許可を得る必要があります。
また、よく誤解されているのですが、婚姻中は、子が父を筆頭者とする戸籍であったが、離婚が成立し、親権者が母になった場合に、自動的に子の戸籍が母に移るわけではありません。子を母親の戸籍に入籍させるには、家庭裁判所の審判書を添付して、区市町村役場に入籍届を提出しなければなりません。

Q:私は、妊娠中に離婚したのですが、離婚後3ヶ月で子供が出生しました。この場合、子供は私と元夫のいずれの戸籍に入るのですか。

離婚成立から300日以内に出生した子は嫡出子としての推定を受け、自動的に結婚していたときの戸籍である夫の戸籍に入ることになります。
したがって、その場合でも子の氏変更許可の審判をして、母の戸籍へ子を入籍させなければなりません。
これも誤解されやすいのですが、妊娠中の離婚は母親が単独親権者となるのですが、最初は子が父親の戸籍に入ることに注意が必要です。

Q:離婚について、せっかく調停で話合いがまとまって、調停調書まで作成されたのに、元夫はその約束を守ってくれません。そうしたら良いでしょうか。

そのようなときは、家庭裁判所は、取決めを守らない当事者に対して、履行勧告をすることができます。
家庭裁判所に対して履行勧告の申出をすれば、家庭裁判所から約束を守らない相手方に調書内容を守るように勧告したりしてもらうことができます。
履行勧告手続に費用はかかりませんが、義務者が勧告に応じない場合でも支払強制力はありません。

Q:調停調書に記載されている慰謝料を支払ってくれないので、夫の給料を差し押さえることができますか。

調停調書に、強制執行認諾条項が入っていれば可能です。
強制執行とは、権利者の申立てにより、地方裁判所が義務者の財産(不動産・債権など)を差し押さえることにより、その財産の中から実質的に債務の履行をはかるための手続です。

Q:離婚に際し、調停で養育費の支払いについて合意しましたが、元夫が、私に息子の養育費を支払ってくれません。どうしたらよいですか。

平成16年4月1日から、養育費等の特則として、将来の分の差押えが定められました。すなわち、差押えは、通常、支払日が過ぎても支払われない分(未払分)についてのみ行うことができるのですが、家庭裁判所の調停や判決などで定めた養育費や婚姻費用の分担金など、夫婦・親子その他の親族関係から生ずる扶養に関する権利で、定期的に支払時期が来るものについては未払分に限らず、将来支払われる予定の、まだ支払日が来ていない分(将来分)についても差押えをすることができることになったのです。
また将来分について、差押えの対象となる財産は、支払い義務者の給料や家賃収入などの継続的に支払われる金銭で、その支払時期が養育費などの支払日よりも後に来るものが該当します(民事執行法151条の2第1項)。
この場合、通常は、原則として4分の1に相当する部分までであるところが、原則として給料などの2分の1に相当する部分までを差し押さえることができることになっています。

Q:妻が突然,子供を連れて出ていってしまいました。私は,離婚はしても良いと考えていますが,子供の親権は譲れません。父親が親権者として引き取ることはできないのでしょうか。妻が親権を取るとこちらにどのような不利益があるのでしょうか。

この場合,離婚することには同意しているのであれば離婚調停の中で親権者について話合いをすることも考えられますが,子供を一刻も早く引き取りたいということであれば,親権者指定の審判申立や審判前の保全処分を行うことなどが考えられます。
子供が中学生くらいであれば、どちらが引き取るかについては、子供の意思が尊重されます。子供が小学生くらいで、父親母親双方が親権者となることを望んでいる場合には,圧倒的に母親が親権者と指定されるケースが多いのが実情です。
母親が親権を取ると、母親が再婚したときなど、知らないうちに子供の氏が母親に合わせて変わっていたということが起こります。


相続問題

Q:相続人間で遺産分割が話し合いがまとまらないのですが,どうしたらよいでしょうか。

家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てることになります。ただし,調停は当事者の合意がなければ成立しないため,最終的には家庭裁判所の審判によって遺産分割がなされることになります。

Q:母が死亡し,相続人は子3人となりました。父は,遺言で全財産を三男に相続させるとしています。この場合,長男と次男は何も相続できないことになるのでしょうか。

兄弟以外の法定相続人は,それぞれ遺留分というものを持っています。遺留分とは,相続財産のうち相続人に残さなければならないもので,遺言等に拘わらず相続人が保留できるものです。
相続財産のうち遺留分がどのくらいであるかは相続人が誰であるかによって異なりますが,上記の事例では相続財産の2分の1です。そして,これを各相続人が法定相続分に従って分割したものが,各相続人の遺留分となります。したがって,長男,次男及び三男はそれぞれ相続財産の1/2×1/3=1/6の遺留分を有していることになります。遺留分に相当する財産を取得できていない場合には,遺留分減殺請求をする必要があります。

Q:父が死亡した後に,父の机の中から遺言書を発見しました。どのように扱えばよいのでしょうか。

遺言書を家庭裁判所に提出して検認の審判申立をしてください。
公正証書遺言以外の方式の遺言について,これを保管する者または発見した者は,遺言を家庭裁判所に提出し検認を請求しなければいけません。検認とは,遺言書の存在・形式を検査し,偽造・変造を防止するものです。
また,遺言書に封印がなされている場合には,開封せずに家庭裁判所に提出する必要があります。

Q:父は,公正証書遺言を残して亡くなりました。遺言の内容は兄に有利なものでした。しかし,父は遺言書が作成された頃には,痴呆で相続のことなど分からない状態であり,遺言は父の意思を反映したものとは到底思えません。このような遺言でも有効なのでしょうか。

遺言が有効であるためには,遺言能力がなければなりません。遺言能力とは,自分の行為の結果を判断できる精神能力です。したがって,進行した痴呆症の人のした遺言は無効です。
しかし,一旦公正証書遺言が作成されてしまうと,その効力を後から争うことは非常に困難です。遺言が無効であることを証明する必要があるのですが,遺言者が死亡しており,立証手段に乏しいからです。

成年後見

Q:成年後見制度とはどのような制度ですか。

認知症,知的障害,精神障害などの理由で判断能力の不十分な方々は,不動産や預貯金などの財産を管理したり,契約を締結したり,遺産分割協議をしたりすることが難しい場合があります。また、騙されたりして被害にあうおそれもあります。このような判断能力の不十分な方々を保護することを目的とするのが成年後見制度です。

Q:成年後見制度にはどのような種類があるのですか。

成年後見制度には,法定後見制度と任意後見制度の2つがあり、法定後見制度は、判断能力の程度など本人の事情に応じて,後見、保佐、補助の3つに分かれています。
法定後見制度においては,家庭裁判所によって選任された成年後見人・保佐人・補助人が,本人の利益のために,本人を代理して契約などの法律行為をしたり,本人が自分で法律行為をするときに同意を与えたり,本人が同意を得ないでした不利益な法律行為を後から取り消したりすることによって,本人を保護しています。

Q:成年後見人等はどのような役割を担っているのですか。誰から監督を受けるのですか。

成年後見人等の職務は本人の財産管理や契約などの法律行為に関するものに限られ、食事の世話や実際の介護などは,その職務ではありません。
また,成年後見人等はその事務について家庭裁判所に報告義務があり、家庭裁判所の監督を受けることになります。

Q:成年後見の申立てをする者がいない場合は,どうすればよいのですか。

身寄りがないなどの理由で,申立てをする人がいない認知性高齢者や知的障害者ないしは精神障害者の保護を図るため,市町村長に法定後見(後見・保佐・補助)の開始の審判申立権が与えられています。

Q:任意後見制度とはどのような制度ですか。

任意後見制度は,本人が十分な判断能力があるうちに,将来,判断能力が不十分な状態になった場合に備えて,予め自らが選んだ任意後見人に,自分の生活,療養看護や財産管理に関する事務について代理権を与える旨の任意後見契約を公証人の作成する公正証書で結んでおくというものです。そうすることで,本人の判断能力が低下した後に,任意後見人が,任意後見契約で決めた事務について,家庭裁判所が選任する「任意後見監督人」の監督のもと本人を代理して契約などをすることによって,本人の意思にしたがった適切な保護をすることが可能になるのです。

Q:成年後見制度を利用したいのですが,申立てから開始までどれくらいの期間がかかりますか。

審理期間については,個々の事案により異なり,一概にはいえません。鑑定手続や成年後見人等の候補者の適格性の調査,本人の陳述聴取など、様々な手続きが必要となり、どうしてもある程度の審理期間を要することになります。
多くの場合,申立てから成年後見等の開始までの期間は,4か月くらいはかかっております。

Q:成年後見制度を利用するには,具体的にどのような手続をすればよいのでしょうか。

まず、法定後見制度を利用するには,本人の住所地の家庭裁判所に後見開始の審判等を申し立てることになります。
次に、任意後見制度を利用するには,公証役場に赴いて任意後見契約を結ぶことになります。

Q:成年後見登記制度とはどんな制度ですか?

成年後見登記制度は,成年後見人などの権限や任意後見契約の内容などをコンピュータ・システムによって登記し,登記官が登記事項を証明した登記事項証明書を発行することによって登記情報を開示する制度です。

Q:登記事務はどこで取り扱っていますか。

東京法務局の後見登録課で,全国の成年後見登記事務を取り扱っています。登記事務のうち,窓口での証明書交付は,東京法務局及び各法務局・地方法務局戸籍課でも取り扱っています。

Q:どのような場合に登記をすることになるのですか。

後見開始の審判がされたときや,任意後見契約の公正証書が作成されたときなどに,家庭裁判所または公証人の嘱託によって登記されることになります。

Q:戸籍上の禁治産・準禁治産の記載はどうなりますか。

禁治産および準禁治産宣告を受けている人は,平成12年4月から,それぞれ「成年被後見人」および「被保佐人」とみなされます。これらの本人,配偶者,四親等内の親族のほか,成年後見人・保佐人とみなされる人などは,後見または保佐の登記の申請ができます。この登記がされると登記官から本人の本籍地の市区町村へ通知され,禁治産および準禁治産の記載のない新しい戸籍が作成されます。

刑事事件

Q:夫が犯罪を犯して,警察に逮捕されてしまいました。今後どうなってしまうのでしょうか。

警察は,逮捕後48時間以内に,事件を検察官に送致します(ただし,被疑者は警察署の留置場に拘束された状態が続きます。)事件の送致を受けた検察官は,24時間以内に裁判官に対して勾留請求をします。勾留期間は原則10日間ですが,さらに捜査が必要と判断される場合には勾留延長といって,もう10日間勾留が継続することになります。
検察官は,勾留期間中に事件を起訴する(裁判にかける)か,不起訴する(裁判にかけない)かを判断します。
不起訴の場合には,釈放されることになります。他方,起訴された場合には,裁判が終了するまで身体の拘束は継続します。もっとも,起訴後は保釈という制度があり,保釈が許可されれば釈放されることになります。

Q:保釈とはどのような制度ですか。

保釈とは,裁判所に保釈保証金を納付し,裁判に出頭しなかったり,保釈中に犯罪行為を行ったりした場合には,保釈保証金を没収するという条件を付けて,暫定的に被告人を釈放する制度です。問題なく裁判が終了した場合には,保釈保証金は返還されます。保釈保証金の金額は,事案によりまちまちですが,100〜300万円程度とされることが多いようです。

Q:執行猶予付判決とはどのようなものですか。

前科がないような場合には,「懲役1年執行猶予3年」のような判決が言い渡されることがあります。上記の場合には,3年間何も犯罪を犯さなければ,懲役1年の刑罰を受けることはなくなります。しかし,3年間の間に何らかの犯罪を犯し,裁判を受けることになれば,上記の執行猶予が取り消され,さらに後に犯した犯罪についての刑罰が課されます。したがって,この場合には,1年間の懲役及び後に犯した犯罪についての刑罰を受けなければならなくなります。

Q:刑事事件を弁護士に依頼した場合,一般的にどのような活動をしてもらえるのでしょうか。

刑事事件における弁護活動は,もちろん事案により様々ですが,ここでは犯罪事実にいて争いがない場合の弁護活動を,捜査段階・公判段階に分けて簡単に説明します。
まず,捜査段階(起訴以前の段階)においては,被害者と示談したり,被害者から嘆願書をもらう等して不起訴処分となるように検察官に働きかけます。あるいは,罰金刑が定められている犯罪であれば,略式起訴(罰金刑等による簡潔な処理)を目指すことになります。
次に,公判段階(公判請求以後の段階)では,被告人が勾留されていれば保釈請求をし,身体の釈放を目指します。また,公判審理においては,執行猶予付判決,罰金刑をもらえるように,被告人自身,被告人の家族,勤務先の上司を尋問する等して被告人に有利な事情を顕出させます。

その他、会社経営の法律相談は、当事務所の「企業法務オンライン」でお答えしております。

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