企業法務
Q:新会社法において、取締役の員数はどのように変更になりましたか。
取締役は、株式会社の業務執行機関で、株式会社で最低1人は必要です。取締役会は3人以上の取締役で構成される必要があるため、取締役会を設置する株式会社では、取締役は3人以上必要ということになります。従来は、常に最低3人の取締役が必要でしたが、新会社法施行後は株式譲渡制限会社では、取締役1人でも良いことになりました。
Q:取締役会は、新会社法でも常に設置する必要があるのですか。
取締役会は、取締役3人以上によって構成され、代表取締役の選任など株式会社の重要な業務に関する意思決定機関です。新会社法施行前は、常に取締役会を設置しなければなりませんでしたが、新会社法下では、取締役会は、株式譲渡制限会社では必ずしも設置する必要はありませんが、それ以外の株式会社では必ず取締役会を設置しなければなりません。
Q:新会社法でも監査役は常に設置する必要がありますか。
監査役は、取締役の職務執行や会計監査をする機関です。新会社法施行前は、常に監査役を設置しなければなりませんでしたが、新会社法下では、株式譲渡制限会社では必ずしも設置する必要はありません。しかし、取締役会を設置する会社では、原則として監査役を設置しなければなりません。
Q:新会社法における監査役会の位置づけについて教えて下さい。
監査役会とは、監査役3人以上によって構成されます。そして、そのうち半数以上は社外監査役である必要があり、監査方針の決定や監査報告の作成などを行う機関です。株式譲渡制限会社、委員会設置会社を除く大会社では、必ず監査役会を設置しなければならないことになっています。また、取締役会を設置しない株式会社は、監査役会を設置することもできません。
Q:新会社法における委員会設置会社とは何ですか。
委員会とは、主として、大企業において機動的な経営と実効的な監督を可能にするために設けられた機関で、指名委員会、監査委員会、報酬委員会から構成されています。監査役を設置している株式会社では、委員会を設置することができないことになっています。他方、会計監査人を設置しない場合には、委員会を設置することもできません。
Q:会計監査人どのような機関で、いかなる場合に設置できるのですか。
会計監査人は、主として大企業において計算書類等の監査を行う機関です。会計監査人は、公認会計士または監査法人で就任できないことになっています。新会社法施行前は、資本金1億円以下で、かつ負債総額が200億円未満の会社の場合、会計監査人を設置することができませんでしたが、新会社法下では、大会社(資本金が5億円以上または負債総額が200億円以上の株式会社)では必ず会計監査人を設置しなければなりませんが、大会社以外の株式会社では設置は任意ということになっています。
Q:新会社法下における会計参与とは何ですか。
会計参与とは、新会社法で新たに設けられた機関で、取締役と共同して計算書類の作成などを行う機関です。すべての株式会社で任意に設置することができます。大会社以外の株式譲渡制限会社が取締役会を設置する場合は、会計参与を設置することで監査役に代えることができることになっています。
Q:新会社法下において譲渡制限会社設立ができるようになって、機関間にどのような変化がありますか。
新会社法により、取締役会を設置しなくても済む、株式譲渡制限会社を設立することができるようになりました。従来、取締役会の設置は、すべての株式会社の義務であったため、株主総会の権限は一定に制限され、かつ厳格な招集手続きが求められていました。しかし、株式譲渡制限会社の場合には、取締役会を設置しないので、株主総会の決議事項が拡大されることになりました。また、取締役会を設置しない株式会社の株主総会は、運営方法も簡素化されています。
Q:新会社法下における取締役と監査役の任期はどのようになっていますか。
これまでは、株式会社の取締役の任期は2年、監査役の任期は4年とされていました。
しかし、小規模の会社では、役員の改選を定期的に行い、それを登記することは煩瑣でまたコスト負担にもなっていました。そこで、新会社法では、株式譲渡制限会社の場合は、取締役、監査役の任期をそれぞれ定款の定めにより、最大10年まで延長することが可能となりました。
Q:新会社法で取締役の欠格事由や員数が変わったとのことですが,どのように変わったのですか。
商法下では,「破産手続開始の決定を受け復権していない者」については,取締役の欠格事由とされていましたが,新会社法では,当該事由が削除されました。
また,新会社法では,「法人」が欠格事由と明記されたほか,証券取引法違反や各種倒産犯罪が欠格事由となりました。
員数については,商法下では,取締役は3人以上が必要とされていましたが,新会社法では,一定の会社を除いては取締役会を設置せず,取締役の員数を1人とすることも認められました。
Q:新会社法ではこれまでの有限会社はどのような扱いを受けるのですか。特別な申請行為等が必要となるのですか。
従前の有限会社は、特例有限会社として扱われます。
ここに、特例有限会社とは、新会社法施行前に有限会社として存在していた会社が、新会社法の施行により自動的に株式会社とみなされることになった会社のことをいいます。既存の有限会社は、原則として、特例有限会社として存続するために特別の定款変更や登記申請は必要ありません。
Q:特例有限会社では、これまでと変わるのはどのような点ですか。
特例有限会社では、従来の有限会社では50名となっていた社員の員数制限が廃止となり、最低資本金も撤廃されます。また、新株予約権や社債の発行が可能になります。そして、新会社法施行後の定款については、「有限会社の定款」が「株式会社の定款」と読み替えられ、「社員」が「株主」に、「持分や出資口数」が「株式や株式数」にそれぞれ読み替えられることになります。
一方、特例有限会社には、その存続期間について、特別に制限は設けられていません。また、特例有限会社は、新会社法上は株式会社となりますが、経過措置で「有限会社」の商号の使用や従来の会社の規律の継続が認められます。
Q:特例有限会社から通常の株式会社に移行したいのですが、どうすれば良いですか。
特例有限会社から、通常の株式会社へ移行する場合、定款においては株式会社への商号変更手続きが必要です。そこで、商号を「株式会社」の文字を用いたものに変更するために、定款変更の株主総会決議を要します。また、登記手続については、特例有限会社の解散登記と株式会社の設立登記を行わねばなりません。
なお、通常の株式会社への移行手続きのためにかかる費用として、登記の登録免許税が上げられますが、これは、特例有限会社解散の登記について3万円、株式会社設立の登記について資本金額の1,000分の1.5(税額が3万円未満の場合は3万円)となります。
Q:これまでの有限会社の取締役等の任期はどうなるのですか。
これまで有限会社は、取締役および監査役には任期の定めがありませんでした。
しかし、新会社法が施行されて有限会社制度が廃止されて、有限会社も株式会社とみなされる(特例有限会社)ことになりますので、取締役及び監査役の任期については、他の株式会社の規定に従わなければならなくなります。
Q:契約書は作成しなくても契約は成立すると聞きました。そうだとすると契約書は作成しなくても良いのではないでしょうか。
確かに、賃貸借契約や、売買契約などは、諾成契約と呼ばれて、契約書は作成しなくても効力は生じます。しかし、口頭だけでは、紛争となった際に言った言わないということになり、トラブルの原因となりますから、基本的には全ての取引について契約書を作成しておかなければいけません。
Q:契約書の原案は、相手に作ってもらって良いですか。
契約書の原案は,自分のほうで作って相手に送付しましょう。
相手方に先に作成させると、どうしても相手方主導で話が進んでしまいます。
ですから、交渉の早い段階で、自分に有利な条項を盛り込んだ契約書原案を作成して相手方に渡すことが重要です。
Q:市販されている契約書のひな形に書き込む形でも良いですか。
市販のひな形は、あくまでも参考として示されているに過ぎません。契約書は一旦締結されてしまえば、その文言にしたがって解釈されますから、自分の要望を具体的に契約書内に盛り込んでおく必要があります。したがって,ひな形に書き込んで使用することはお勧めできません。
作成の仕方がわからなかったり、内容が複雑な場合には、はやり弁護士に相談した方がよいです。
Q:売掛金や請負代金の支払いが滞ったときにはどうしたらよいのですか。
債権の回収には様々な方法が考えられます。
まず,相手との話合いが可能であれば,裁判外の手段としては,強制執行認諾付きの公正証書を作成するのも一つの方法です。
また,裁判上の手段としては,仮差押え,訴訟提起が一般的といえます。
仮差押えのためには,不動産、商品、売掛債権、預金など差押の対象財産を探すことが重要になりますし,裁判外での話合いを行うにしても,相手方の資産状況を事前に把握しておくことはその後の手段の検討のために有用です。
Q:取引先が倒産したらどうしたらよいのですか。
破産や民事再生などの法的手続きの時は、それに従わなければならないでしょう。任意整理のときは、弁護士主導ならその弁護士の処理に協力したほうが解決は早いでしょう。しかし、困るのは、整理屋が入り込んだときです。この場合、債権者から破産を申し立てるという手段もあります。
その他、会社経営の法律相談は、当事務所の「企業法務オンライン」でお答えしております。
知的財産権
Q:当社の商標が侵害されているおそれがあるのですが,警告状を出す必要はありますか。警告状を出す場合の注意点は何ですか。
一般的には,警告状を出してから訴訟提起が行いますが,訴訟提起の要件ではありませんので,必ずしも必要ではありません。しかし,事案によっては警告状を出すことによって,相手方が自主的に使用を止めることもあり得ますし,反論によっては今後の争点も判明するなどの効果を得られることもあります。
警告状を出す際には,相手方が本当に侵害しているのかについて注意が必要です。
むやみに警告状を出すと,不法行為に該当したり,不正競争防止法違反となることもあります。