「fear Tactics」(脅し戦術) - ニュースな英語 - Goo辞書
国際ニュースの話題をご紹介するこのコラム、今週もアメリカ中間選挙の話題です。オバマ民主党がいかに苦境に追い込まれているかをご紹介した先週に続き、今週は「ブッシュ陣営流」ともいえる選挙手法でますます意気盛んな共和党についてです。ブッシュ前大統領とオバマ大統領の支持率がほぼ拮抗するという、2年前からすると信じられない世論調査結果も発表されています。おまけに共和党の「ダース・ベイダー」と呼ばれた男が、大規模な保守系の政治集会に久々に姿を現しました。まるで亡霊のように、げっそり痩せて。(gooニュース 加藤祐子)
ブッシュ氏とオバマ氏は同じくらい?
米CNNが8日、驚くべき世論調査結果を発表しました。「オバマ氏の方がジョージ・W・ブッシュ氏よりも優れた大統領 だと答えた人は47%。ブッシュ氏の方が優れていたと答えたのは、45%」だというのです。わずか2ポイント差で、2人の評価が拮抗している。1年前の同じ調査では、23ポイントもの差がついたのに。
驚くべき、と書きましたが、アメリカは先週ご紹介した次第の政治状況なので、「えええ? 嘘でしょう?」と仰天したというよりは、「うわあ……そこまできたか」という思いの方が強いかもしれません。
先週も書いたように、この2年間でアメリカの政治地図は大きく変わりました。オバマ的リベラルから、保守へと大きく揺り戻ったのです。これほどの保守反動がわずか2年でこれほど盛り上がるとは、2008年11月には誰も予想していなかったと思います。なにせギャラップ調査によると、2008年11月上旬の時点でブッシュ大統領支持 率は26%。不支持率は64%でした。2009年1月の退任時も30%前後。対するオバマ大統領の支持率は、就任時に67%。それが今や45%です。
リンツリーは、何種類の木です。
2年前の大統領選では、現職のブッシュ大統領があまりに不人気なため、共和党候補の応援演説もほとんどしないし、共和党全国大会にも直接出席しませんでした。候補たちは、ブッシュ政権との間に距離をおくのに必死でした。そして当時、ブッシュ大統領に輪をかけて国民に不人気だったのが、ディック・チェイニー副大統領でした。
宣伝めいてしまいますが、チェイニー前副大統領に関する本を訳したおかげで、私はその人となりをかなり知ることができました。チェイニー氏は「謀(はかりごと)は密なるを貴ぶ」と全身に刻まれているかのような為政者です。現代民主国家のステーツマンとしてはあるまじき、権謀術数の達人です。9/11の� ��に実質的にアメリカ政府を指揮したのも彼だし、テロ対策としての国内盗聴を実施させたのも彼だし、アフガニスタンなどで拘束したテロ容疑者への拷問を容認したのも彼と彼の側近たちだというのです。全ては、アメリカを守るために。
ブッシュ政権8年間の間、ディック・チェイニーが国民に対して貫いた秘密主義のため、彼についたアダナが「ダース・ベイダー」でした。そして『スター・ウォーズ』の「ダース・ベイダー」があのマスクやマントの下は満身創痍だったように、チェイニーも重い心臓疾患を抱えており、副大統領になる直前にも心臓発作を起こしたほど。そんな自分の健康状態も国民に公表せず、秘密主義を貫き、そのまま副大統領になった人です。
どのように見捨てられた見捨てられた公園NSWへの行き方
ブッシュ政権末期に「イラク戦争やグアンタナモやアブグレイブや国内盗聴は全部チェイニーのせい」とリベラルから糾弾され、あまりに不人気だったチェイニー氏は、その不人気ゆえに、2008年大統領選にほとんど顔を出しませんでした。民主党候補がブッシュ=チェイニー政権を猛攻撃するのはもちろんのこと、共和党候補も「チェイニーのような(強力すぎる)副大統領はおかない」と繰り返し、ブッシュ=チェイニー政権から必死になって距離をおいていました。
2008年の選挙ではまるで表舞台に立たなかったチェイニー氏は退任後、「イラクから撤退し、グアンタナモ収容所は閉鎖する」と発表したオバマ政権をさかんに批判し� ��した。「オバマのやり方は危険だ。アメリカはまたテロ攻撃の危険にさらされる」と。09年の間はそうやってしょっちゅう、保守系ラジオやフォックス・ニュースなどに出演したのですが、今年2月に生涯5度目の心臓発作に襲われたチェイニー氏は、7月にまた胸の痛みを訴えて入院。当初は「単なる検査のため」と報道されましたが、実は弱った心臓に人工ポンプを埋め込むための大掛かりな手術のための入院だと後に明らかになりました。
チェイニー氏がこのところずっとオバマ政権に対して沈黙していたのはそのためです。
ブッシュ陣営の流儀が復活
ただしチェイニー氏があえて表舞台に立たずとも、その娘のリズ・チェイニーが各メディアでオバマ批判を展開。オバマ氏の対テロ政策は「運が良いだけで� ��このままではアメリカが危ない」というメッセージをこれでもかと繰り返しています。
コンスタンティン牛理由
加えて、ブッシュ=チェイニー陣営に勝利をもたらした選挙参謀カール・ローヴ氏(ブッシュ政権では大統領上級顧問など)が、今回の中間選挙でも裏で指揮をとっているようです(ちなみに2008年大統領選で共和党の副大統領候補に無名のサラ・ペイリン氏を抜擢し、マケイン陣営を指揮したのは、ローヴ氏の弟子とされる人物でした)。
『ニューヨーク・タイムズ』の超リベラルな名物コラムニスト、モーリーン・ダウド氏は、「匿名寄付を使って、民主党候補を攻撃しまくる中傷CM(attack ad)を各地で流しまくる」選挙作戦を取りまとめているのが、ローヴ氏だと糾弾。共和党の中傷CMについてはオバマ大統領も「正体不明の外国発の資金が、選挙CMの費用を払っている団体に流れている」と非難しています(一方でこの『ワシントン・ポスト』紙記事によると、資金が外国発かどうかは断定できないとのこと)。
資金の出所は不確かであっても、11月2日の投票日に向けていま全米各地で、中傷CMや有権者への電話攻勢で対立候補を攻撃しまくる選挙戦術が繰り広げられているのは間違いない。これぞまさにローヴ流です。アメリカ政治における中傷CMの歴史は長く、カール・ローヴが発明したわけでもなく、民主党候補も中傷CMを活用しています。しかし、2000年選挙の共和党予備選で、ブッシュ陣営が当時のマケイン候補を徹底的に追い落とすために、州ごと地区ごとに駆使した中傷攻撃戦法はローヴ氏が編み出したものと言われており、2004年のブッシュ再選の際にもこの手法で民主党候補を徹底攻撃。そのため2000年以降、こうした中傷攻撃を「ローヴ流」と言うようになっています。「○○候補は国民� ��雇用を外国に流出させる法案を提出した」「○○候補は中絶に賛成だ。子供殺しだ」などなど。挙げ句の果てには、民主党全国委員会が「カール・ローヴは民主主義を簒奪している」などと、ローヴ氏名指しの中傷CMをネットなどで流す始末。カール・ローヴがある意味で芸術的な域にまで高めた中傷CM作戦を非難する民主党が、カール・ローヴに対して中傷CMを流すという、なんだかもうカフカ的とも言える状況です。
ローヴ氏はブッシュ氏の側近であって、チェイニー氏の側近ではありませんでした。彼は今年になって、「チェイニーを副大統領にするのには反対だった」と公言したほどです。それでも、オバマ氏の外交政策を「甘い、危険だ」と批判する点において、ローヴ氏はチェイニー氏と一緒です。というか、オバマ政権の全てをとことん批判するという点で、ローヴ氏とチェイニー氏は一致しているはずです。加えて、医療保険改革などオバマ政権の色々な改革を「増税で連邦政府の機能を拡大するな、政府は小さい方がいい、国民の生活に口を出すな」と批判する「ティーパーティー(茶会)運動」は、チェイニー氏の保守政治信条を継承していると言えます。つまり、リズ・チェイニーとカー� ��・ローヴ、そしてティーパーティー運動がこれほど活発にオバマ批判を繰り広げているこの状況ならば、健康に不安のあるチェイニー氏がわざわざ表舞台に立つ必要もないか。このまま投票日を迎えるのだろうか——と、私はそんな風に思っていました。
しかし、「ダース・ベイダー」は帰ってきました。
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